Author : トム・ロブ・スミス | Manufacturer : 新潮社 | CustomerReview : これは凄いぞ、面白いぞ。 - 最近文庫本ってめっきり手に取る事が減ったのだが、CWA賞受賞、まだ20歳代の若さである新鋭の作家への興味、そして、このジャンルでは稀と思える旧ソビエト、特にスターリン体制下を舞台に展開されるサスペンス・スリラーとなれば、やはり触手が動いてしまう。 いきなり、この世の果てと思える飢餓と喰うか喰われるかの極限状況の中、S・キングを想起させるひりひりした心理描写と背筋が凍るような恐怖描写に、これはと期待に胸を弾ませながら読み続けた。 主人公レオは眉目秀麗、沈着冷静と評される国家保安省捜査官。恐怖は必要悪、無慈悲こそ美徳との信念でスターリン体制を支える冷徹者、革命後の現体制に何ら懐疑も持たないものの、体制堅持の為に手段を選ばぬそのやり方には罪悪感を感じるエリートだが、狡猾で卑劣な部下に嵌められてしまう。 氷のように硬質で冷たく画一的な国家をイメージさせるモスクワの堅牢の建物、その恐怖政治を補完する保安省の不気味さにおののきながら、その地で息を潜め脅えながら生きる人々の生活観、恐怖のシステムの中枢にいながらも疑心暗鬼を覚える主人公、更に妻との関係が実はずっと以前から○○だった事へのどうしようもない虚無感と喪失感、正にスターリン時代のソビエトの底知れぬ恐怖と自らが罠に嵌って追われていく不安、緊迫感が、心理サスペンスとして切々と迫ってきて、本当にゾッとする怖さ、そして面白さなのだ。 実話を元にした幼児連続殺人のサイコ・スリラーとしては、後編への絶妙の予告編的役割を持つ今作、文句なくお薦め。 続き »
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